『アイーダ』感想

2010年02月16日 17:20

14日(日曜日)、主人と娘と私と3人で劇団四季の『アイーダ』を見て来ました。
『アイーダ』を見るために上京したのではなく、私の同窓会で上京したついでにせっかくだから何か見ようと思って選んだのが『アイーダ』でした。

もともとは歌舞伎を観たかったのにチケットが取れなくて、こういっては劇団四季さんに失礼なのですが、これでいっか~な気分で取ったチケットでした。

ヴェルディのオペラの『凱旋行進曲』はあまりにも有名ですし、宝塚でも宝塚版『アイーダ』を上演しているので、なんとなく内容も知っているように思っていましたが、よくよく考えてみるとどれも見たことがない。最近の忙しさか予習する暇もなかったですし、劇団四季の俳優さんも全く知らない。パンフレットを見ても誰が主役かも判らない。そんな状態で期待せずに開演を待ちました。

導入部、現代の博物館でのシーンでぐいぐいと物語の中に入って行きました。アムネリスの歌う「お洒落は私の切り札」は、今の若い女性にも共感できる普遍的な女性の感情なのではないかと微笑ましく隣の娘の顔をみやりました。

力強いアイーダの歌声。祖国への思いを紡ぐ奴隷達の歌に震えるような感動を覚え、男性アンサンブルのダンスに圧倒され、3時間があっと言う間でした。

アイーダとラダメスのデュエットに酔いしれるのは勿論のこと。今日こうやって感想を書いている今、思い出しても涙が出るのはエジプト王女アムネリスのこと・・・。

二人の裏切りを知り、静かに「真実をみた」を歌うシーンから後は、もしかしたら私はアムネリスだけを観ていたように思います。なんと静かに嫉妬するのだろう。アイーダとラダメスに裁定を下すアムネリス。光川愛さん演じるアムネリスは線が細くて、もう少し女王として目覚めた貫禄があっても良かったのかもとも思いましたが、華奢で儚げな女性が精一杯女王としての矜持を保とうとする様により深く感動するのだと気付きました。

着飾って綺麗になることだけが自分の切り札と歌っていたあの人形のような王女が、アイーダとラダメスによって、ひとりの女としてではなく、国を守る女王として下した裁定はあまりにも哀しく胸を打ちました。友情と恋の両方を失って、それでも来世でふたりを結ばせようとする心が痛々しい。

数千年の時を経て、きっと何度も生を受けながら、やっとめぐり合ったアイーダとラダメス。その二人を祝福するよりも、それを見届けて安堵するかのようなアムネリスに私は泣けて泣けてしかたありませんでした。

今回、アムネリスを演じたのは光川愛さん。パンフレットにも載っていなくて、「追補」という形で掲載されていました。またもう一度、光川さんのアムネリスで『アイーダ』を観たい。
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はじめての『顔見世』

2008年12月12日 15:03

1210まねき


10日(水)、生まれて初めて南座の『吉例顔見世興行』を観にいきました。

大学時代の友人(東京在住)二人と主人と4人で行く予定をしていたのですが、顔見世に関しては4人とも初めて。
友達二人は、大阪の松竹座も名古屋も御園座もほとんど見ている(海老蔵さまファン)ので頼り切っていました。

「上演開始が4時15分だから、8時過ぎには終わるよね~。榊に任せるからレストランを8時半に予約しておいてね。」と言うことになってしっかり予約していたのです。

っが、それが間違っていることに気付いたのが三日前。なぁんと『顔見世』って長いんです。終わる時間が9時50分!!間に幕間が何度かあるとは言え、5時間半ほどあるんです。椅子と合体してしまいそうだ・・・。

というわけで日曜日急遽レストランをキャンセル。悪いので夫婦だけで別の日に予約入れましたが、私たちも残念でしかたがありません。調べなかった私が悪い・・・。

当日の夕食を南座の中にある「花萬」に予約しようと電話したら満席。そりゃぁそうでしょう、前日なんですから。これはお弁当を買うのも並ぶのは大変かと思い、高島屋に電話して料亭のお弁当を頼もうとしたら、人気のお弁当はこれまた『顔見世』のお陰で売り切れ近し。「菊乃井」のお弁当は2つしか残りがなく、「菊乃井」2つ「魚三楼」を2つ予約しました。

『顔見世』はやはり京都の師走の風物詩。不景気風もナンのその、こうしていると弥が上にもワクワク感が高まりました。

さて、当日は高島屋にお弁当と取りに行って、南座へ。昼の部がまだ終わっていなかったのですが、夜の部を見る人が南座の前にだんだん増えて来ました。お着物の奥様方が多い。私も着物で行こうかと思ったのですが、普段着慣れていないのに5時間も絶対に無理!見上げれば勘亭流の「まねき」。どなたの顔もなんだか華やいで見えます。あぁ、これが『顔見世』なのね~。

開場されても入り口が狭いので、中に入るのがまた一苦労。時間が掛かること掛かること。パンフレットを買ってイヤフォンを借りて、席についたらもうチョンパでした。

傾城反魂香(けいせいはんごうこう)

浮世又平役の中村翫雀が吃音の障害を持つ絵師を熱演します。私って涙もろいので、これだけで泣けてしまいました。又平の女房役は四代目坂田藤十郎。親子での夫婦役となるので、世話女房が時として母親に見えました。
歌舞伎をあまり見たことがない私にはとっても面白い演目で、1時間25分があっという間。これなら最後までしっかり観ていられると思いました。


大石最後の一日

主人も私も『忠臣蔵』大好きなので、期待していたのですが、そっか、「最後の日」だから討ち入りは終わったあとなのね。ちょっと残念に思いながらも、見ている内にグイグイと。
やはり中村吉衛門は上手いです。それほどの盛り上がりのない台詞劇なので、上手い人でないと1時間以上は持たないことでしょう。磯貝十郎左衛門おみのの恋物語、それを見守る大石に涙涙。いやぁ、私って「七五調」の台詞に弱いんだとつくづく。大袈裟な言葉って好きみたい。これはこれからも歌舞伎に嵌れそうです。


信濃路紅葉鬼揃(しなのじもみじのおにぞろい)

これは圧巻!これだけでももう一回みたい!!坂東玉三郎を初め、上村吉弥、市川門之助、市川笑也、市川春猿、市川笑三郎の綺麗どころがずらりと。能装束に身を包んで花道から出て来たときにはため息が・・・。主人はまたここで玉三郎を見て「顔、ちっちゃ!」
市川海老蔵の平維茂がこれまた美しい。酒に酔ってまどろんでいる様は神々しいばかりでした。かつて大好きだった片岡孝夫、改めて片岡仁左衛門の山神も、ちょっとユーモラスなところもあり芸達者な重鎮の舞に満足しました。仁左衛門さん、今でも維茂役だって出来るくらいにお美しいと思いますが、隈取でお顔がはっきりわからなかったのがちょっと残念でした。

「鬼揃」というだけあって、玉三郎の上臈以下5人の美しい侍女たちは眠った維茂と喰らわんと鬼女に豹変します。これがほんとに凄かった!能では鬼面をつけて踊るところを、ここではしっかりと隈取で鬼の形相を表しているのです。あの美しい玉さまが、春猿さまがぁぁぁ~。睨んでみえを切った姿は夢に出てきそうなくらい怖かった。
5人の鬼女が打ち揃っての毛振り。女形がこんなに激しい毛振りをすることって今まであったのだろうかと、歌舞伎初心者の私は口をあんぐり開けて見てました。友達に聞くと多分なかったんじゃないかと言ってましたが、彼女はこの演目を見るのは二回目。前回は鬼の面をつけていて、隈取ではなかったのだそうです。玉三郎の「みえ」はほんとに凄かった。お化けでもなんでも綺麗な人ほど怖いってつくづく感じた次第です。ほんと、夢に出て来たよ~。
歌舞伎じゃなかったら「ブラボー!」って声をあげて立ちたいくらい感激しました。あぁ、もう一回観たい。小首をかしげた春猿もほんと、綺麗だったわぁ。ちょっと好きになりそう。宝塚だったら男役、歌舞伎だったら女形が好きな私って、どうなんだろう(笑)。
能、古今和歌集、白楽天の詩など、イヤフォンでの説明がとてもためになりました。
特に白楽天の「詩林間に酒を煖めて紅葉を焼く 石上に詩を題して緑苔を掃ふ (林間煖酒焼紅葉 石上題詩掃緑苔)」これは先日私が撮った写真を思い出して、目の前に紅葉の山が広がりました。歌舞伎は伝統芸能だけあって奥が深いです。

源氏物語

これは37分という一番短い演目。今年は「源氏物語千年紀」ということで京都はちょっと沸いております。この千年紀の新作舞踊劇です。
もうこれは、海老蔵さんで光の君を観たい!というファンの要望に応えたものだと思います。匂うばかりの美しい光の君。中村扇雀演じる夕顔を抱きかかえる様は、絵のように美しい。これだけ大柄で綺麗な役者さんはどんな役をやっても絵になります。滑舌も声もいいし、申し分なし!ズギュンとハートマークになるようなことはないのですが(好みと違うんで)、彼の芝居だったら全部みたいと思わせてくれる役者さんです。
ええ、もうこれで終わりぃ~!もっともっと光の君を見たかったなぁ。
残念だったのは、私の年のせいなのか、六條御息所の生霊が出てくるところ、照明が暗すぎて玉三郎さまの所作が殆ど見えなかったこと。オペラグラスを持っていなかったので余計。隣のご婦人(多分70歳以上かと)も「何にも見えへんかったから寝そうになったわ。」と・・・。私も70歳並の視力なのかな。

『義経千本桜』感想

2008年07月23日 18:16

二泊三日のお江戸の旅、三日目(21日)に歌舞伎座で『義経千本桜』を観ました。
丁度私たち夫婦が東京に行く時に、玉三郎さまと海老蔵さまの歌舞伎、しかも『義経千本桜』と言うことで、これは是非観ないと、と歌舞伎経験無しの主人を説得。

「あ~ただって知ってる玉三郎さんだよ~、海老蔵さんだよ~、しかも好きな歴史物だよ~。」と口説き落とし、やっとウンと言わせたのです。

チケットは海老蔵さんの後援会に入っている友達に取って貰いました。前日20日のプチ同窓会でそのチケットを渡してもらったのですが、お席は前から3列目。花道からちょっと離れているということで、友達は「悪いお席でごめんね」と謝っていましたが、私には十分にいいお席。
「彼女からのチケットだと、ちゃんと目線くれるわよ。」といつも入手してもらっている友達も言っていたように、しっかり海老さまの視線をゲット♪

0721歌舞伎座01 歌舞伎座




「チョンパ」で華やかな幕開き。伏見稲荷の鳥居前。段治郎さんの義経が武者人形のように美しい。春猿さんの静御前がこれまた錦絵のように美しい。主人は歌舞伎初体験。かく言う私だってナマで観るのは20数年ぶり。しっかり案内用のイアフォンを耳にして、目を皿のようにして見入りました。

静御前が梅の木に縛りつけられるんですが、この場面のエロティシズムってどうなんだろう。ヨヨと泣き崩れるなんて現代の女性にはないですよね~。宝塚の男役さんとは逆で、女形の美しさってこういうところなんだなぁって感心しきり。かと言って、これを女性で演じるのはまた大変。あれだけの鬘とお衣装をつけて、ずっと同じ姿勢を保つなんて、かなりな重労働ですから。それを汗も出さずに涼しげなお顔で演じる姿。伝統芸能の真髄を見たような気がしました。

イヤフォンの説明によると、この場面の元になっているのは、玄宗皇帝と楊貴妃のお話だということで、ひとつ勉強になりました。所作事の説明も簡潔で分かりやすく説明されていて、これは借りてよかったです。

二幕目は『吉野山』いわゆる道行きです。満開の桜の中。ここで一幕目の春猿に変わって玉三郎さまが静御前で出て来ます。もうここで客席はため息!私も手が痛くなるほど拍手して、うっとり。隣の主人が「顔、ちっちゃ!」
神々しいまでの美しさ。立ってるだけで絵になります。動くとびっくりしちゃう。変になよなよしてないんですね。無駄な動きが全くなくて、自然なんです。
海老蔵さんの忠信との道行き。歌舞伎のド素人の私でも楽しめます。

そして三幕目が『川連法眼館』。ここの狐忠信はテレビなどで何度か見たことがあります。
アクロバティックで、飽きさせない。早や替わり、宙乗りなど、誰もが楽しめる要素が満載。海老蔵さんの独断場。大きな男なのに狐の子を演じる姿は本当にいじらしくて涙が出ました。最後の宙乗りでは万雷の拍手。桜吹雪が舞うとどよめきがおこります。
観終わった直後、主人が「またチケット取って貰って。松竹座でも御園座でも行こうな。」と言ってくれました。やっぱり最初にいいお芝居をいいお席で見ると嵌れるんだなぁとつくづく。主人は20数年前に宝塚初体験も前から2列目のド真ん中の席で観たので、きっちり嵌ってくれましたし、単純なんですけどね。

今回『ミス・サイゴン』と『義経千本桜』の二つを観て感じたこと。
『ミス・サイゴン』は母親の子供を思う愛、『狐忠信』は子供が親を思う愛。どちらも親子の切れない情が描かれています。命さえも投げ出す親の愛。孝行できずに死に別れた親を思い、人間に姿を変えて傍に居ようとする子の愛。
我が家の近所では野良猫の親子、野鳥の親子の哀しくなるような親子の情を私は見ています。なのに昨今の人間社会はどうなってしまったのでしょう。親が子を殺し、子が親を殺す。そんな事件が後を絶ちません。自分を含め、私たちの世代が何かを忘れてしまったからではないだろうか、とそんな反省もちょっぴりしてしまった三日間でした。