観終わった後、涙を流しながらパソコンの画面に向って拍手をしていました。
『
エリザベートウィーン版』素晴らしいの一語に尽きます。
今まで観たい観たいと思っていた舞台が私の目の前に繰り広げられ、最初の音が鳴ったと同時に鳥肌が立ちました。
内容は宝塚をずっと観てきたので、英語字幕で観なくても分かります。
ただ、手元には以前買った
エリザベート ― オリジナル・ウィーン・キャスト
の日本語字幕も用意していました。これもだいたい頭に入っているので、演技をじっくり鑑賞することが出来ました。
宝塚との大きな違いは、オリジナルでの主役はタイトルロール通りエリザベートであるということ。
その為にトートの出番が少なく、またあまりにもあっさりとした衣装に少し驚きましたが、トートが主役でないことで余計このミュージカルが描こうとしているものが分かったような気がします。
トートというのはもしかしたら内なるエリザベート自身なのではないか、観ていてそんな思いがしました。
10年ほど前にこの作品に嵌った時、色々とエリザベートに関する本なども読みましたが、彼女が求めていたものは自己の魂の解放とそして死への畏怖と憧憬。
やはりエリザベートを主役にする方が理解し易いと感じました。
惜しむらくは、画面があまりにも暗いこと。
せっかく観たかった驚異的と言われる舞台装置がはっきりと観えなかったのは残念でした。
個々に気に入った箇所はたくさんあります。
大好きな曲「最後のダンス」
トート役のMATE KAMARAS。なかなかの美形で歌唱力も抜群!
『10周年記念コンサート』CDを持っているので、そのジャケットで各国のトート俳優を見ていましたが、彼が一番容姿は私好みかもしれません(宝塚を除く…)。
第一幕の最後の曲「私は私だけのもの」。
宝塚ではトート主役の為、エリザベートが「私に〜」と熱唱する声にかぶせてトートが「エリザベ〜ト」と歌い挙げて幕なのですが、ウィーン版(多分日本の東宝版も)はエリザベートで終わります。
しかも皇帝フランツが「エリザベート」と呼ぶのを手で制して「私だけのもの!」と言い放つのには胸のすく想いがしました。
そして私が一番お気に入りの曲「闇が広がる」。
あぁ、これが観たかったのです!
CDで聴いていてどんな演出になっているのかとても興味があったんです。
このシーンはやはり素晴らしい!この曲はカラオケにもあるのですが、ドイツ語で友人とハモルのが私の夢です。
日本のキャストに比べてルドルフ役の俳優さんがちょっと老けていたのですが、聴いているうちにそれが気にならなくなりました。
はらはらと無意識に泣いてしまったのは、ルドルフが死んだ後のエリザベートの嘆きの歌でした。
歌うというよりも、まるでルドルフに許しを請うように話しかける姿が胸を打ちました。
それは、今私自身の心が不安定だからかもしれません。娘がインフルエンザで39度熱があるにも関わらず、どうしても避けられない用事で出かけていることと大雪の中息子が遠征に行っていること。
子を想う母親の哀しさ切なさにいつも以上に心が揺さぶられたようです。
宝塚版ではなかったエリザベートが父の死を知る場面。
楽しかったころのシシィと父親との掛け合いの曲を微妙に音程をづらした哀しい楽調にこれまた涙しました。
英語字幕でしっかり意味を理解したいです。
また、ハプスブルク家の終焉を語るようなエリザベートの親族の最期。
ひとり残されるエリザベートの悲哀が伝わって来ます。
あまりに政治的過ぎるためか宝塚では描かれなかった民衆の運動。
ここにもまた変わり行く時代に取り残された彼女を想い涙が出ました。
エリザベートはこんな生き方をしたくはなかったのだと思います。
時代に翻弄され、自分の命を生きられなかった彼女を救えたのは、ただ一人トートだったのかもしれません。
あと特筆すべきはルイジ・ルキーニ。
彼の伸びやかで色気のある声に痺れました。
実質上の主役は彼ではないかというくらい、曲数も多いし見せ場も多い。
ラストはかなりショッキングな演出でした。これは宝塚では出来ないでしょうが、この幕切れは鮮やかだと思いました。
宝塚ではこれから華やかなフィナーレがあるのですが、これはあっさりとしたカーテンコールのみ。
宝塚に慣れた私は、ちょっと物足りなくなって花組版の『エリザベート』を引っ張り出し続けてフィナーレの群舞を観ました。
『エリザベート』という作品の見所は…。
栄華を誇って来た一族の最期には徒花のようなドラマがあり、その主役はいつも女性です。
プトレマイオス朝のクレオパトラ然り、ブルボン王朝のマリー・アントワネット然り、そしてこのハプスブルク家のエリザベート然り。
そういった豪華絢爛の中の倦怠と堕落、豪奢にしてまた滅亡の影を落とした物語を好む方には、この『エリザベート』は格好のドラマです。
またミュージカルが苦手という方にも、ほぼ歌で構成されているこのミュージカルは取っつき易いミューカルだと思います。
そして宝塚を苦手だと仰る方にも『エリザベート宝塚版』は宝塚入門篇として是非お薦めしたい作品です。
時代は19世紀末と古い話のようですが、今に通じるテーマも随所に散りばめられています。
親と子の問題、嫁姑の問題、夫婦の問題。
私は観てはいなかったのですが、『熟年離婚』の話をしている友人の会話を聞いて私はこの『エリザベート』を思い出しました。
年老いた皇帝フランツが妻であるエリザベートにひたすら「愛している」と語りかけるのに、「夜の湖に浮かぶ二つのボート」のようだと妻であるエリザベート歌うシーンは、どちらの味方をするのでもなく、ただずっと交じり合わない心に涙が出るのです。
色々と見所の多いこの作品、ひとりでも多くの方に見ていただきたい作品です。
ウィーン版や宝塚版東宝版のDVDもお薦めですが、映画のDVDに比べて高いと思われるかもしれません。
『
宝塚スカイステージ』では2006年1月1日に一度だけ「エリザベート月組版」がオンエアされます。
一度この素晴らしいミュージカルをご覧になってみては如何でしょうか?
全くの余談ですが…。
2006年に
東宝でまたエリザベートが上演されます。
ルドルフ役の
浦井健治さんは『仮面ライダークウガ』のラスボス「ン・ダグバ・ゼバ」役の役者さんです(^^;
彼は2004年、2005年にもルドルフ役を演じています。クウガ好きなもんですみません。
あと、我がダーリン筧利夫さんにいつかルイジ・ルキーニを演じて欲しい。これが私の長年の夢です。