『何日君再来』

2007年05月28日 14:52

ここ数年、こんなに泣いたことはありませんでした。
芝居も映画も、これまでこんなに帰り道でまで堪えられずに涙がほほを伝うことはなかったです。

筧利夫さん主演の『何日君再来』。
辻希美ちゃんの妊娠降板で話題になるものの、それ以外での評判をテレビでは聞かず、また私自身も出来るだけ予備知識を入れないようにしていたので、殆ど内容も知らないまま観劇当日を迎えました。

結果、整理されないまま咀嚼出来ないままの感情が今も胸を射しています。

このお芝居に出会えたこと、そして筧利夫さんのファンで居たことがただただ嬉しい。

テレサテンに関しては、私はその歌よりも、謎めいた死に関してや政治的に利用された経緯の方を知っているような気がします。
好きな歌ではなかったので、じっくりとテレサの歌を聴いたのは、実はこれが初めて。多分、このお芝居を見る機会が無ければ一生知らない歌だったと思います。

思い出も取り立ててないテレサの歌の数々が、芝居の中で流れてくるとこんなに心に響いてくるのは、en-Rayさんの澄んだ歌声と、岡村俊一氏の演出に負う所が大きい。

テレサの人生をモチーフにしながら、これは決してテレサの物語ではないのです。文化を政治的に利用されるへことの怒り、哀しさを伝えているものだと思います。
政治家や外交官が何年もの時間をかけて超えていこうとする国と国の垣根を、たったひとつの歌や映画は軽く超えてしまうことがあります。
そしてそれとは逆に、政治的な力のもとに、歌や映画が規制されたり反勢力に利用されたりすることもあるのです。

中国と台湾の関係だけではなく、日本と韓国、日本と台湾の関係、そこに横たわる偏見や差別や憎しみを描き、その空しさを描いているのです。

今でこそ、韓国俳優は韓流スタアとして日本でも持てはやされブームにもなっていますが、かつて日本では在日韓国人や朝鮮人が差別に苦しみ、人種を隠して活動していました。
私は未見ですが、今上映されている『パッチギ!love and piece』もそんな在日韓国人を描いているので、今日本人によってこのような問題を描ける時代になったことは、本当に喜ばしいことなのだと思います。
前回の『パッチギ!』では、日本で発売中止になった歌として「イムジン川」が出て来ると聴きました。こちらも私は未見で、また今後も観る予定はないので、語れる立場ではないのですが。
(何故観ないかと申しますと、監督さんが苦手だからです ^^;)

時の為政者は、「たかが歌」と思いながらも、なんらかの意図を持ってこのような歌を規制しまた利用します。
「何日君再来」の冒頭で語られるビートルズの「イマジン」もしかり。
そして私は知らなかったこの舞台のタイトルとなった「何日君再来」も・・・。
多分「イマジン」のエピソードを知っていても、「何日君再来」のエピソードを知っている日本人は少ないのではないかと思います。
私も含め、日本人はアジアに目を向けることが少ないようです。
劇中歌にもあるように、「川の流れの始まるところ」に私達は生まれ出でて来たというのに・・・。


筧利夫さん
素晴らしかったです!ほぼ出ずっぱり。10年前に見た『西遊記』以来、こんなに動く筧さんを見たのは久しぶりだと思います。殺陣あり、歌あり、長台詞あり。
この長台詞には本当に感動しました。変わらぬ筧節。滑舌よく説得するような台詞回し。これぞ、筧利夫だ!
ほんと、筧さんのファンで良かった。聞かせる心に響く歌を歌える役者さんになったなぁと、これがまた涙でした。
「有線大賞こそが本当に嬉しい賞」と台詞にあるように、筧さんの「心のト・ビラ」をもっと有線リクエストしようと思いました!!

黒木メイサさん
これが、もうめちゃくちゃかっこいい!惚れました。殺陣が決まるし、すごい男前台詞。眼力が強いし声が通るし、まだ若いのにこれからが楽しみ。

藤原一裕さん(ザ・ちゃらんぽらん)
この方が今回一番のサプライズ!!最初ちょっと笑いが滑っていることもありましたが、話しが進むに連れてキャラがはっきりして来ます。あれは美味しいなぁ。
遠目に見るとちょっと太った藤井隆さんみたい。これからドラマになんかも出て来られるんじゃないかなぁ。舞台でシリアスな役もいいかも。

石川梨華ちゃん
長い台詞をこなして堂々と(?)アイドルを演じ切っていて好感度大です。「ええ~、もとモー娘。と~?!」なんてキャスト発表の時に思った私。ごめんなさい!
他のダンサーさん達と比べて、足が上がってないのをおばちゃんはしっかりチェックしてしまいましたが(笑)。

遠山俊也さん
この方を舞台で観たのは初めてです。
『踊る大捜査線』キャストとしてずっと注目して見ていた役者さんなので、筧さんとの舞台共演を観られてラッキーでした。
ドラマとは全く違いますね~。

en-Rayさん
登場シーンの京劇の発声が凄かった!声量があり過ぎて声が割れるので、もう少しミキシングをちゃんとして欲しかったです。
清々しい声に魅了されました。CDも買って、今朝はずっと聞いています。この方の歌を聴いてテレサテンさんの歌に興味が出て来ました。
日本語を全く話さないのが効果的でよかったです。片言の日本語を話すよりも、より記号的でこの芝居のテーマに沿っているように思いました。

彩輝なおさん
さえちゃん、相変わらず歌下手ぁ~!ごめんなさい。先に悪いことを書いて置きます。
歌が苦手なのは宝塚ファンの間でも結構有名でしたよね。
さえちゃんの演技は若手のころに少し見ただけで、引退公演の『エリザベート』でのトートもDVDまで買ったのに、まだ見ていないという・・・(^^;
でもでも、素敵な女優さんになってました。無理な男役の発生よりもずっと台詞が明確になっていいです。立ち姿が美しいし、綺麗!
じわぁっと涙が出て来たのは、「自分のことで、愛する人がその父親に殴られるのを見る辛さ」と言うような台詞を言った時。結婚を反対された恨みも勿論あるでしょうけれど、こんなに切ない言葉ってないですよ。さえちゃんのこの台詞が心に沁みました。


泣けた原因はいっぱいあります。
中国語の歌を聞いてレスリー・チャンを思い出してしまったこと。
ホウ・シャオシエン監督、トニー・レオン主演の『非情城市』を思い出したこと。

あとひとつは・・・スタンディングオベーション・・・。
スタンディングオベーションに感動したのではないのです。安易なスタンディングオベーションはしないと、心に決めて観にいったのです。なので、私は最後まで立ちませんでした。とめどなく流れる涙をハンカチで押さえ、手が痛くなるほど拍手をしましたが、立ちませんでした。
そのためカーテンコールの筧さんが全く見えな~い!!私にとってはこれ一回だけの観劇。最後まで筧さんを観たかった。こちらに目線を送ってくれる筧さんを感じたかった。
なのに、最初からみんな立つんですもの・・・。変な意地を張らずに立てば良かった…。でも…。
いつからこんなことになったのでしょうか?千秋楽ならわかるのですが・・・。
1ヶ月ほど前の日経新聞の夕刊で、この当たり前になってしまったスタンディングオベーションのことについて書かれていたのを読んで、私は今後立たないと決めた偏屈者です。
最高に感動したし、演じられた皆さんの素晴らしさを称えたい気持ちは人一倍ありますが、立つことの意味がわからないのです。
などと、最後ちょこっと問題提起して、書き散らかした感想をここらで終わりにします。
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