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『点と線』

2007年11月26日 17:14

昨夜、録画しておいた『点と線』を一気に見ました。
私は松本清張氏の小説の中で『砂の器』に次いで好きな作品です。今までドラマ化も映画化もされいなかったのが不思議。映像化がむずかしかったのかもしれません。

中学三年生の時に父の本棚にあった『蒼ざめた礼服』を読み、松本清張という作家を知りました。高校受験のためにしばらく読めなかったのですが、高校生1年の夏休みに、第二作目として読んだのがこの『点と線』でした。
この時は友達の海の別荘にひとりで行くことになり、一人旅の退屈さを紛らわせようと持っていったのですが、むさぼるように読み、小説の世界に入り込んで主人公と一緒になって時刻表と格闘していたために、自分が降りるべき駅を3つも過ごしてしまったという思い出と共にこの小説は心に残っています。

さて、今回のドラマ。あの時の感動がまざまざと蘇って来ました。私の中にある松本清張の描く世界が壊されることなく、今考えうる最高の役者さん達によって演じられていることに感動してしまいました。

今までビートたけしさんの映画は好きではありませんでした。失礼ながら演技も私の好みではなかったのですが、今回の鳥飼刑事役は彼以外では演じられなかったのではないかと思えるほど嵌っていました。何しろ私がこの小説を読んだのは30年以上も前のことなので、原作の鳥飼刑事がどんなであったか覚えてはいません。でもたけしさんの演じる鳥飼刑事は、正しく松本清張が描く刑事そのものに思えました。

昭和32年。私が生まれた年です。最近娘とちょっとそんな話になって、「おかあさんって戦後すぐの生まれなのね。」と言われてびっくりしました。私は戦争も知らなければ、戦後の荒廃した様子も全くしりません。物心ついた時にはテレビがあり、新幹線や東京オリンピックが夢のように語られて、幼稚園の壁にもひかり号の大きな絵が描かれていました。
なので、戦後を引きずっている時代に生まれたという認識は全くなかったのです。でも平成も19年ともなると、昭和20年も32年もそんな変わりがない時代で、昭和の中ごろと一括りに言われてしまう時代になるのだなぁと、ちょっと不思議な感覚でした。

今この『点と線』をドラマ化して世に出す意義は大いにあるのだと思います。ノスタルジーではなく、ちゃんと知っておかねばならない現代史です。
ヒットしている映画『三丁目の夕日』には私はまったく懐かしさも感じませんでした(『2』はまだ観ていません)。どうも私は性格が捻くれているせいか、社会の裏を見たいと思ってしまいます。
・・・あの時代は良かった、人情があった。人と人との温もりがあった。でも今はそれがない・・・
そういう過去を美化して観ることが私には出来ません。松本清張氏の小説は、社会の裏にある汚さ、人の欲望の醜さを描き、それでもひたむきにそれに対峙しようとする人間を描いています。刑事であったり、新聞記者であったり、サラリーマンだったり。彼らの目を通して私達読者に事件の裏にあるものを、活字になっているものを疑う心を、真実を知ることの必要を教えてくれていました。
あれから50年経った今も世の中は何も変わっていません。この『点と線』を見て、今に置き換えることの出来る事件があるというのは悲しいことなのかもしれません。
「もはや戦後ではない」そう言って急激に経済発展して行った日本は、この時代にその体内に膿を孕み初めていたのかもしれません。

などと色々と考えながら久々に家族で観ることの出来た良いドラマでした。
高橋克典さんの演じる三原刑事はちょっとカッコ良すぎたかなぁ。
市原悦子さんの圧倒的な存在感に脱帽!博多東署を出る時に鳥飼と交わす視線と微妙な表情には鳥肌が立ちました。これは2度3度見て確かめて欲しいシーンです。
安田辰郎役の柳葉敏郎さん。代表作になるのではないでしょうか。『華麗なる一族』での三雲祥一役に続き、こういう渋い役が似合う役者さんになりました。声に色気があって、誠実さと冷酷さが同居するような複雑なインテリを演じたら右に出るものはいないんじゃないかと思います。このまま年を重ねて行って欲しい。
安田亮子役の夏川結衣さん。今回のドラマの成功不成功の半分はこの方に掛かっているのではないかと思えました。動きの少ない中での表情の演技、流石です。
他にも書きたい役者さんは一杯です。人気ではなく演技が上手い役者さんの起用がこのドラマに重みを与えていたと思います。

現代の三原刑事が声に出して泣くシーンは、『砂の器』の加藤嘉さんが演じるあるシーンへのオマージュかとも思いました。

実は今までテレビ朝日でドラマ化された松本清張原作のドラマはどれも観ていません。どうも私は女性主人公の物は好きではないようで(と他人事のようですが)、『わるいやつら』『黒皮の手帖』『けものみち』等原作を読んでいてもあまり記憶に残っていないのです。
出来れば、私が最初に松本清張氏に触れた『蒼ざめた礼服』や『黒い福音』『草の陰刻』などが観てみたいです。

しかし、テレビ朝日開局50周年記念がこの『点と線』、日本テレビ開局50周年記念が同じく松本清張原作の『鬼畜』。しかも主役も同じビートたけしさん。これはちょっとなぁと思ってしまいましたが・・・。
『鬼畜』は緒方拳さんのイメージが強いので、軍配はテレビ朝日に上がったような気がしています。
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コメント

  1. かねさだ | URL | -

    見ました!

    ビートたけし、柳葉敏郎、この二人に今までお金と時間を
    費やしてきた私です。
    原作の世界が壊されることなく、ドラマ化されていましたね。
    中でも、夏川結衣さん流石でしたね。

    個人的には清張氏の小説では、「Dの複合」が好きです。
    社会派ではありませんが。考古学好きなので・・・
    「蒼ざめた礼服」は未読なので、読んでみます!

  2. 榊 真央 | URL | 4eg7mJls

    おお!

    『Dの複合』がなかなか出てこなかったのです。
    私もこの小説、大好きです。北緯35度、東経135度とか、これも数字がとても気になるお話でした。浦島伝説や羽衣伝説の違った見方を教えてもらいました。
    『蒼ざめた礼服』、もう捨てられてて実家にはないので、私ももう一度買って読んでみたいです。『点と線』も昨夜アマゾンにオーダーしました。
    私の清張コレクションは殆ど捨てられてしまっています(;;)『砂の器』は下巻しかありませんでした。

    ビートたけしさんへの苦手意識が無くなったのも私にとっては収穫でした。
    ギバさんはこういう役をされるといつまでも美しい。
    昔からギバさんで三島由紀夫の『憂国』を見たいと思っているのですが、年齢的にもう無理だなと残念でなりません。

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